2021年の「老人福祉・介護事業」倒産は81件
新型コロナウイルス関連倒産は11件と急増
2021年の介護事業者の倒産が81件にのぼったことが、東京商工リサーチの特別調査によって明らかになった。2020年は倒産が過去最多118件にのぼったが、前年より37件減って81件となった。倒産件数の減少は3年ぶり。
昨年と比較して、倒産件数は減少したが、小規模事業者の動向は厳しい現状となっている。「老人福祉・介護事業」の倒産のうち、負債1億円未満は70件(構成比86.4%)、従業員10名未満も73件(構成比90.1%)と、小・零細事業者はそれぞれ9割を超えた。
資金面に余裕のない小規模事業者は、競合や人手不足に伴うコストアップを吸収できず、経営悪化に歯止めがかからないまま新型コロナが追い打ちをかけている結果となった。
【介護 2021年 倒産件数 東京商工リサーチ】
業種別では、「訪問介護事業」が47件(前年比16.0%減、構成比58.0%)と減少した。ヘルパーの人手不足や高齢化など課題も多く、介護事業者の倒産の約6割を占めた。次いで、デイサービスやショートステイの「通所・短期入所介護事業」は17件(同55.2%減、同20.9%)と急減した。一部地域では、大手企業の進出で過当競争が続いているが、感染を恐れた利用控えが徐々に解消し、各種支援策も奏功した。
有料老人ホームは4件(前年比60.0%減、構成比4.9%)で、特別養護老人ホームや認知症グループホームなどを含む「その他」は13件(前年比7.1%減、構成比16.0%)だった。新型コロナウイルス関連倒産は11件となっている。
地区別では、最多は関東の24件(前年比33.3%減、構成比29.6%)。次いで、近畿23件(同20.6%減、同28.3%)、九州11件(同8.3%減、同13.5%)、中部8件(同55.5%減、同9.8%)、東北(同33.3%減、同4.9%)と四国(前年同数、同4.9%)が各4件、北海道(前年比40.0%減、同3.7%)と中国(同57.1%減、同3.7%)が各3件、北陸1件(前年同数、同1.2%)の順。
東京商工リサーチはこうした状況を踏まえ「課題の人手不足も、コロナ禍で他の産業から流入したほか、介護職員の処遇改善も徐々に進んでいることは明るい材料だが、長引くコロナ禍で外国人実習生や留学生などの人材が減少しているおり、飲食業や建設業などへの人材流出の可能性もある。また、ヘルパーなどで濃厚接触者が増えれば介護サービスの低下の恐れもあり、介護人材の確保は予断を許さない状況が続く。
高齢化社会に向け、さらなる人材確保と生産性の向上が必要だ。ただ、小規模事業者が多い業界なだけに自力での課題克服は限界があり、きめ細かな支援が求められている。経営体力が低下し、支援で支えられている事業者も多い。今後の改定や、これまでのコロナ関連の支援が縮小されれば、経営意欲が低下し、廃業や倒産などが急増する恐れがある」としている。